公開: 2024年6月10日
更新: 2024年6月10日
民主主義の社会では、人々の中に、正しい情報を得ようとしない人、論理的に考え、正しい結論を得ようとしせず、正しい情報が与えられても、自分が持っていた考えを修正できない人々の割合が一定以上を占めるようになると、世論による選択が、合理的な選択からはかけ離れたものになることがあります。そのような状態で、世論が理性的な選択から大きく離れることを、集団ヒステリーと呼びます。
例えば、第2次世界大戦勃発前のドイツや日本で、主戦派の勢力が躍進した事実は、この「集団ヒステリー」が起こっていたと考える歴史学者は、少なくありません。現在でも、ウクライナに攻め込んだロシアで、熱狂的な支持を受けているプーチン政権も、ロシア国民の「集団ヒステリー」状態を利用して、侵略戦争を続けていると、考えられています。
この集団ヒステリー状態に陥らないようにするためには、客観的に正しい情報を社会全体に提供し続けること、正しい情報に基づいて、妥当な考え方で、妥当な結論を得られる知性を、社会のメンバーが持つこと、そして、様々な情報網から、妥当な情報を獲得するための情報経路を遮断しないこと、などが必要不可欠になります。
第2次世界大戦前のドイツや日本の社会では、政府によるプロパガンダの流布が協力で、特に、それ以外の情報系路は、政府によって、実質的に遮断されていました。そのことが、両国で「集団ヒステリー」状態が発生した、主たる原因でした。さらに、この両国では、その集団主義的な文化の影響が強く、国民が得ている情報を、冷静に整理して、正しい考えに基づいて、妥当な結論を導き出すための知性が欠けていたことも指摘できます。